相続税の申告は、戸籍の収集から財産の評価、遺産分割協議、申告書の作成まで多くの工程があり、期限は10か月です。「何を・どの順で進めるのか」を、必要書類とあわせて全体像で解説します。

相続税申告の全体の流れ

① 相続の開始 死亡届・葬儀 ② 戸籍収集 相続人の確定・遺言書の確認 ③ 財産調査・評価 残高証明・不動産の評価 ④ 遺産分割協議 協議書の作成 ⑤ 申告書の作成 特例の適用判断 ⑥ 申告・納付 10か月以内
図:相続税申告の全体の流れ(相続開始から10か月以内の申告・納付まで)
  1. 相続人の確定(戸籍の収集)
  2. 遺言書の有無の確認
  3. 財産・債務の把握、資料の収集
  4. 財産の評価(相続税評価額の算定)
  5. 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
  6. 申告書の作成・納税資金の準備
  7. 申告・納付(相続開始から10か月以内)

このうち、資料収集と遺産分割協議に最も時間がかかります。期限から逆算して早めに動くことが大切です。スケジュールの詳細はトップページの申告スケジュールもご覧ください。

月別モデルスケジュール

全体像をつかんだら、次は「いつ・何をするか」です。相続の開始(お亡くなりになった日)を起点に、10か月の期限までの標準的な進め方を月別に整理しました。あくまで目安ですが、この順序を意識すると滞りなく進められます。

時期(死亡から)主にやること
〜1か月死亡届の提出(7日以内)、葬儀、健康保険・年金・公共料金などの名義変更
1〜3か月四十九日を目安に戸籍の収集を開始し、相続人を確定。遺言書の有無を確認。相続放棄・限定承認は3か月以内に判断
3〜6か月準確定申告(4か月以内)、財産・債務の調査、残高証明書などの取り寄せ、不動産・有価証券などの財産評価
6〜8か月遺産分割協議、遺産分割協議書の作成
8〜10か月申告書の作成、納税資金の準備、申告・納付(10か月以内)

ここで気をつけたいのは、相続放棄(3か月)と準確定申告(4か月)は、相続税の申告期限より先に来る点です。期限を過ぎたときの取扱いは相続税の申告期限は10か月。遅れるとどうなる?で詳しく解説しています。

⚠ あくまで標準的な目安です

相続人が多い、遠方の戸籍が必要、財産の種類が多いといった事情があると、資料収集や評価に想定以上の時間がかかります。期限から逆算して早めに着手することが、何よりの対策です。

主な必要書類

相続人に関する書類

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書
  • 遺言書、または遺産分割協議書

財産に関する書類

  • 預貯金:残高証明書、通帳の写し
  • 不動産:登記簿謄本、固定資産税評価証明書、名寄帳、公図・測量図
  • 有価証券:残高証明書、評価明細
  • 生命保険:保険金の支払通知書
  • その他:ゴルフ会員権、貴金属などの資料

債務・葬式費用に関する書類

  • 借入金の残高証明書、未払いの医療費・租税公課の領収書
  • 葬式費用の領収書・メモ

ご自身の状況に合わせて必要書類を絞り込み、そのまま印刷できる相続税申告 必要書類チェックリストをご用意しています。事務所作成の全11分類の一覧(PDF)もダウンロードいただけます。

⚠ 早めの請求を

残高証明書や有価証券の評価資料などは、金融機関の発行に1〜2か月かかることもあります。また、お布施など領収書が出ない葬式費用は、日付・金額・寺院名をメモで残しておくと申告に使えます。

自分で申告?それとも税理士に依頼?

財産が預貯金中心でシンプルなケースなら、ご自身での申告も不可能ではありません。一方で、次のような場合は評価や判断が専門的になり、税理士に依頼するメリットが大きくなります。

税理士費用はかかりますが、適正な評価や特例の適用によって、税額や税務調査のリスクを抑えられます。費用の目安は税理士報酬のページをご覧ください。

遺産分割協議書のポイント

遺言書がない場合は、相続人全員で「誰が何を取得するか」を話し合い、その結果を遺産分割協議書にまとめます。これは相続税の申告だけでなく、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約にも使う大切な書類です。作成にあたっては次の点にご注意ください。

  • 相続人全員が署名し、実印で押印します。あわせて全員の印鑑証明書を添付します。一人でも欠けると無効です。
  • 不動産は、登記簿(登記事項証明書)の表記どおりに所在・地番・地目・地積を記載します。普段の住所表示で書くと、登記手続きに使えないことがあります。
  • 預貯金は、金融機関名・支店名・口座番号まで特定して記載します。
  • 特定の相続人が多く取得する代わりに他の相続人へ金銭を支払う代償分割の場合は、「誰が誰にいくら支払う」旨を必ず明記します。記載が漏れると、支払いが贈与とみなされるおそれがあります。
  • 後から見つかった財産の取り扱いを定める条項(例:「本協議書に記載のない財産が判明したときは○○が取得する」または「別途協議する」)を入れておくと、再協議の手間を防げます。

遺産分割協議書は、書き方ひとつで登記や金融機関の手続きが滞ることがあります。当事務所では、相続税申告と一体で遺産分割協議書の作成もサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。

申告して終わりではない——申告後の手続き

納付の方法

相続税は金銭による一括納付が原則で、申告期限(10か月)までに納めます。主な納付方法は次のとおりです。

  • 金融機関・税務署の窓口で、納付書により現金で納付
  • クレジットカード納付(「国税クレジットカードお支払サイト」経由。決済手数料がかかります)
  • スマホアプリ納付(○○Pay等。1回あたりの上限があります)
  • e-Taxのダイレクト納付(登録した預貯金口座からの引落し。電子申告した場合に利用できます)

期限までに納税資金を用意できない場合の分割払い(延納)や、現物で納める物納の制度もありますが、いずれも要件と手続きが必要です。

不動産の相続登記(2024年4月から義務化)

相続で不動産を取得したときは、法務局で名義変更(相続登記)を行います。2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に登記する必要があります。正当な理由なく怠ると、過料の対象となる場合があります。当事務所では、登記の実務は提携の司法書士と連携してご案内します。

税務調査への備え

相続税の税務調査は、申告のおおむね1〜2年後に行われることが多く、実地調査では申告漏れを指摘されるケースが少なくありません。なかでも指摘が多いのが名義預金です。家族名義の預金でも、実質的に被相続人が管理・入金していたものは相続財産に含めて申告する必要があります。あらかじめ資金の流れを整理しておくと安心です。

まずは「申告が必要か」の確認から

そもそも申告が必要かどうかは、基礎控除相続税シミュレーターで確認できます。必要そうであれば、書類集めと並行して早めにご相談ください。

この記事のよくある質問

戸籍謄本はどこで取得できますか?

本籍地の市区町村役場で取得します。2024年3月開始の広域交付制度により、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できる場合もあります(取得できる範囲には制限があります)。

相続税の申告は自分でもできますか?

財産が預貯金中心でシンプルな場合は可能です。土地や非上場株式がある場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使う場合は、評価・判断が専門的になるため税理士への依頼をおすすめします。

参考(出典)

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する税務上のアドバイスではありません。実際の取扱いは個別の事情により異なる場合があります。記載内容は2026年6月時点の税制に基づいています。相続税申告については税理士にご相談ください。

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