相続税には「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」という申告・納付の期限があります。この期限を過ぎると、加算税や延滞税といったペナルティが生じるほか、税負担を軽くする特例が使えなくなることもあります。本記事では、申告期限の数え方と、遅れた場合のリスクを税理士が解説します。

相続税の申告・納付期限は「10か月以内」

相続開始 (お亡くなりの日) 3か月以内 相続放棄・限定承認 (家庭裁判所・参考) 4か月以内 準確定申告 (所得税) 10か月以内 相続税の申告・納付
図:相続開始からの主な期限。相続税の申告・納付は10か月以内

相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から数えて10か月以内に、「申告書の提出」と「納税」の両方を行う必要があります。

例)1月10日に死亡 → 期限は11月10日

期限の日が土日・祝日の場合は、その次の平日が期限になります。

期限に遅れると生じる3つのペナルティ

① 無申告加算税

期限内に申告しなかった場合に課されます。原則として納付すべき税額の15%(50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)です。ただし、税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、5%に軽減されます。

② 延滞税

納税が遅れた日数に応じて、利息のように課される税です。納期限の翌日から計算され、納期限から2か月を境に税率が上がります(税率は年によって変動します)。

③ 重加算税

財産を意図的に隠す・偽るなど悪質と判断された場合は、加算税に代えて35〜40%という重い税が課されます。

⚠ ポイント

これらは「本来の相続税」に上乗せされる余分な負担です。期限を守るだけで避けられる出費なので、早めの着手が何より大切です。

10か月の前に来る期限——時系列で整理

相続では、相続税の10か月より前に期限が来る手続きがいくつかあります。中でも相続放棄などは、期限を過ぎると原則としてやり直しがきかないため、早い段階で全体像をつかんでおくことが大切です。次の表は、2026年(令和8年)1月10日に亡くなり、同じ日に相続の開始を知った場合の期限のめやすです。

手続き期限のめやす例:1月10日に死亡・同日に相続開始を知った場合
死亡届の提出死亡を知った日から7日以内2026年1月16日ごろ
相続放棄・限定承認
(家庭裁判所への申述)
相続の開始を知った日の翌日から3か月以内2026年4月10日
準確定申告
(被相続人の所得税)
相続の開始を知った日の翌日から4か月以内2026年5月10日
相続税の申告・納付相続の開始を知った日の翌日から10か月以内2026年11月10日

相続放棄・限定承認は3か月という短い期限で、この期間を過ぎると、原則として借金などのマイナスの財産も含めて相続を承認したものとして扱われます。全体の進め方は相続税申告の流れ、準備する書類は必要書類チェックリストもあわせてご確認ください。

⚠ 起算日にご注意ください

死亡届は戸籍法上の手続きで「死亡を知った日から」数えます。一方、相続放棄・準確定申告・相続税は「相続の開始があったことを知った日の翌日から」数えるため、起算のしかたが異なります。いずれも期限の日が土日・祝日にあたるときは、その次の平日が期限になります。

「知った日」が死亡日と異なるケース

相続税の10か月は、相続人・受遺者ごとに「その相続の開始があったことを知った日」を起点として数えます。多くの場合は亡くなった日と同じですが、次のように後からになることもあり、その場合は期限もそのぶん後ろにずれます。

  • 音信不通だった相続人……遠方や疎遠で、他の相続人などから連絡を受けてはじめて死亡を知った場合は、その連絡を受けた日が起点になります。
  • あとで知った受遺者……遺言によって財産を受け取ることを、死亡からしばらくたって知った場合は、その遺贈があったことを知った日が起点になります。
  • 失踪宣告による相続……行方不明の方について失踪宣告があった場合は、その審判の確定などを知った日が起点になります。

このため、同じ被相続人についてでも、相続人・受遺者によって10か月の期限日が違うことがあります。ご自身の起点がいつになるかは事情によって判断が分かれる場合がありますので、迷うときは早めにご確認ください。

延滞税・加算税はいくらになる?

延滞税は、納期限の翌日から実際に納めた日までの日数に応じて、利息のようにかかります。令和8年分の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを超える期間は年9.1%です(割合は毎年見直されます)。

例)相続税500万円を、納期限から6か月遅れて納付した場合

2か月分(61日):5,000,000円 × 2.8% × 61日 ÷ 365 ≒ 23,397円
残り4か月分(122日):5,000,000円 × 9.1% × 122日 ÷ 365 ≒ 152,082円
合計 ≒ 175,400円(100円未満切り捨て)
※日数・金額は概算です。実際は暦の日数にもとづいて計算します。

無申告加算税は、いつ・どの段階で期限後申告をしたかによって割合が変わります(令和6年以後に申告期限が到来するもの)。

申告のタイミング無申告加算税の割合
税務調査の通知を受けるに、自主的に期限後申告一律 5%
調査の通知後~調査で指摘される前10%
(50万円超の部分は15%/300万円超の部分は25%)
調査で指摘された後15%
(50万円超の部分は20%/300万円超の部分は30%)

さらに、財産を意図的に隠す・偽るなど悪質と判断された場合は、加算税に代えて重加算税(35〜40%)という重い負担が課されます。いずれも本来の相続税に上乗せされるもので、期限を守れば避けられる出費です。

特例が使えなくなるリスク

配偶者の税額軽減小規模宅地等の特例は、原則として「期限内に申告すること」が適用の条件です。

期限までに遺産分割が決まらない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて一旦申告しておけば、後日分割が確定したときにこれらの特例を適用できます。何もせずに期限を過ぎてしまうと、本来使えたはずの特例を逃すおそれがあります。

納税は「現金一括」が原則

相続税は金銭での一括納付が原則です。期限までに現金を用意できない場合に備えて、分割払いの「延納」や、現物で納める「物納」の制度もありますが、いずれも要件と手続きが必要です。不動産が多く現金が少ないケースでは、納税資金の準備を早めに進めることが重要です。

延納・物納という選択肢

相続税は金銭で一括納付するのが原則ですが、それがどうしても難しい場合には、次の制度があります。

  • 延納……相続税を分割して年払いで納める方法です。原則として担保の提供が必要で、分割している間は利子税がかかります。金銭で一度に納めることが困難な金額であることなど、一定の要件を満たす必要があります。
  • 物納……延納によっても金銭で納めることが難しい場合に限り、相続した不動産などの現物で納める方法です。納められる財産の種類や順位が定められており、要件は延納よりも厳格です。

いずれも申告期限までの申請が前提で、手続きも複雑です。不動産が多く現金が少ないなど納税資金に不安がある場合は、当サイトの相続税シミュレーターでおおよその税額を把握したうえで、お早めにご相談ください。

だからこそ「早めの相談」を

戸籍の収集、財産の評価、遺産分割協議には想像以上に時間がかかり、10か月は意外と短いものです。まずは基礎控除や当サイトの相続税シミュレーターで申告の要否を確認し、必要書類チェックリストで準備する書類を把握のうえ、必要そうであればお早めにご相談ください。

この記事のよくある質問

期限までに遺産分割がまとまらない場合はどうすればよいですか?

未分割のまま法定相続分で一旦申告・納税し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。分割確定後に配偶者の税額軽減などの特例を適用し、納め過ぎた税金の還付を受けられます。

期限後に自主的に申告した場合のペナルティはどうなりますか?

税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は5%に軽減されます。納付日までの延滞税は別途かかります。

参考(出典)

関連コラム

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する税務上のアドバイスではありません。実際の取扱いは個別の事情により異なる場合があります。記載内容は2026年6月時点の税制に基づいています。相続税申告については税理士にご相談ください。

期限まで時間がない方も、まずはご相談を

「相続が起きたが何から手をつければ…」という段階で大丈夫です。
初回相談は無料です。堺市の相続税専門の税理士がスケジュールから一緒に整理します。

無料相談を申し込む

お電話でも承ります:072-343-0389(平日9:30-17:30/土9:30-12:00)